C++1z shared_ptrの配列対応

C++1zでは、unique_ptr<T[ ]>と同様に、shared_ptrもテンプレート引数をshared_ptr<T[ ]>もしくはshared_ptr<T[N]>のように指定することで、配列を扱えるようになります。

std::shared_ptr<double[1024]> p1 {new double[1024]};
std::shared_ptr<double[]> p2 {new double[n]};

// 添字アクセス
double* p = p1[0];

shared_ptr<T[ ]>std::vector<shared_ptr<T>>と比べて、実装として参照カウンタがひとつで済みます。そのため、空間とパフォーマンスはshared_ptr<T[ ]>の方が優れています。

この配列では、以下のような仕様の更新・追加があります:

  • コンストラクタが配列も受け取れるような仕様に文面変更 (インタフェースは変わらない)
  • 要素型を表すメンバ型としてelement_typeを追加
    • テンプレートパラメータTを直接使用していたところを、配列も考慮した要素型element_typeを使用するように変更
  • 配列用にoperator[ ]を追加
    • テンプレートパラメータが配列型でない場合、この演算子が定義されるかは未規定
  • std::reinterpret_pointer_cast()関数を追加
    • 互換性のある配列間の変換で使用する。shared_ptr<T[ ]> p;reinterpret_pointer_cast<U[ ]>(p)shared_ptr<U[ ]>に変換する

標準にshared_ptrが入る以前、Boostにはshared_arrayという配列を扱う専用のスマートポインタもありましたが、標準ではその設計は採用しませんでした。unique_ptrを先に配列に対応したため、shared_ptrはそちらに合わせて配列対応することになりました。

この配列対応は、Boostでは1.53.0から入っています。

make_shared()の配列対応がN3939で提案されていますが、これはC++1zでは採用されていません。Boostでは1.56.0で対応しています。

参照

お断り

この記事の内容は、C++1zが正式リリースされる際には変更される可能性があります。正式リリース後には、C++日本語リファレンスサイトcpprefjpの以下の階層の下に解説ページを用意する予定です。

C++1z Chronoライブラリ durationクラスとtime_pointクラスの変更操作をconstexpr対応

ChronoライブラリはC++11, C++14と段階的にconstexprの対応を進めてきました。C++1zでは、durationの変更操作、time_pointの変更操作が全てconstexpr対応します。

template <class Rep, class Period = ratio<1>>
class duration {
public:
    constexpr duration& operator++();
    constexpr duration operator++(int);
    constexpr duration& operator--();
    constexpr duration operator--(int);

    constexpr duration& operator+=(const duration& d);
    constexpr duration& operator-=(const duration& d);

    constexpr duration& operator*=(const rep& rhs);
    constexpr duration& operator/=(const rep& rhs);
    constexpr duration& operator%=(const rep& rhs);
    constexpr duration& operator%=(const duration& rhs);
};
template <class Clock, class Duration = typename Clock::duration>
class time_point {
public:
    constexpr time_point& operator+=(const duration& d);
    constexpr time_point& operator-=(const duration& d);
};

これで、Chronoライブラリでconstexprになっていないのは、Clockだけになります。標準で定義されるClockは、実行環境の時計を扱うため、constexpr化はできません。自分で定義するClockがコンパイル時に扱えるものであれば、その時間演算は全てconstexprで行えるようになります。

参照

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C++1z char_traitsのconstexpr対応

C++1zでのstring_viewの追加にともない、その実装に必要なstd::char_traitsクラスの一部メンバ関数constexprに対応します。

constexpr対応するのは、以下のメンバ関数です:

static constexpr int compare(const char_type* s1, const char_type* s2, size_t n);
static constexpr size_t length(const char_type* s);
static constexpr const char_type* find(const char_type* s, size_t n, const char_type& a);

参照

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C++1z 値のコピー省略を保証

関数の戻り値のコピーを発生させない手法として、RVO (Return Value Optimization) やNRVO (Named Return Value Optimization) といった最適化がありました。

// RVOの最適化が動作した場合
struct Foo {};

Foo foo()
{
    return Foo();
}

Foo x = foo(); // Foo型のコピーコンストラクタが動作することなくxが初期化される
// NRVOの最適化が動作した場合
struct Foo { int value = 0; };

Foo foo()
{
    Foo y;
    y.value = 42;
    return y;
}

Foo x = foo(); // Foo型のコピーコンストラクタが動作することなくxが初期化される

しかし、これらの最適化はコンパイラに対して許可された動作であって、そのように最適化されることが保証されるものではありません。そのため、実際には(N)RVOによってコピーは起こらないけどコピーコンストラクタは用意しなければならない、といったことになります。

C++1zでは、このようなコピー省略を保証する仕組みが導入されます。そのため、オブジェクトの初期化のために使用するのであれば、コピーもムーブもできない型であっても、関数の戻り値として返せるようになります。

// C++1z
struct Foo {
    // Fooはコピーもムーブもできない
    Foo() = default;
    Foo(const Foo&) = delete;
    Foo(Foo&&) = delete;
};

Foo foo()
{
    return Foo();
}

Foo y = foo(); // OK

このコピー省略のためには、C++11で右辺値参照を導入するときに規定された「値カテゴリー (value category)」の仕様を利用します。prvalueという一時オブジェクトを表すカテゴリーの値を、オブジェクトの初期化のために使用する場合に、コピーが省略されるという仕様になります。

参照

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更新履歴

整数を、任意の基数の文字列に変換する

除算と剰余で作れる。テーブルを拡張すれば何進数でもいける。

#include <iostream>
#include <cassert>
#include <string>
#include <sstream>

template <class Integer>
std::string to_base_string(Integer x, int base)
{
    assert(base >= 2 && base <= 16);

    if (x == 0)
        return "0";

    const std::string table = "0123456789abcdef";
    std::string result;
    Integer y = x;
    do {
        Integer div = y / base;
        Integer mod = y % base;

        result = table[mod] + result;
        y = div;
    }
    while (y != 0);

    return result;
}

int main()
{
    std::cout << to_base_string(254, 2) << std::endl;
    std::cout << to_base_string(9, 8) << std::endl;
    std::cout << to_base_string(254, 16) << std::endl;
}

出力:

11111110
11
fe

浮動小数点数を2の乗数で割る

a/bをする場合、bが2の乗数であれば「aの指数 - log2(b)」で除算ができます。

#include <iostream>
#include <bitset>
#include <cstdint>
#include <cassert>
#include <cmath>

union SingleFloat {
    float value;
    struct {
        int fraction : 23;
        int exponent : 8;
        bool sign : 1;
    } parts;
};

SingleFloat divide(SingleFloat a, std::uint32_t b)
{
    // 2の乗数のみ受け付ける
    assert(std::bitset<32>(b).count() == 1);

    SingleFloat result;
    result.parts.fraction = a.parts.fraction;
    result.parts.exponent = a.parts.exponent - std::log2(b);
    result.parts.sign = a.parts.sign;
    return result;
}

SingleFloat make_by_float(float x)
{
    SingleFloat result;
    result.value = x;
    return result;
}

int main()
{
    // 8/4 == 2
    std::cout << divide(make_by_float(8.0f), 4).value << std::endl;

    // 9/4 == 2.25
    std::cout << divide(make_by_float(9.0f), 4).value << std::endl;

    // 24/8 == 3
    std::cout << divide(make_by_float(24.0f), 8).value << std::endl;
}

出力:

2
2.25
3

ここでは、aが0、非正規化数、無限大、NaNの場合については考慮していません。

追記(2016/12/27 17:45)

もうちょっと真面目に実装し、上述した未考慮のケースに対応したコードはこちら:

#include <iostream>
#include <bitset>
#include <cstdint>
#include <cassert>
#include <cmath>

union SingleFloat {
    float value;
    struct {
        int fraction : 23;
        int exponent : 8;
        bool sign : 1;
    } parts;
};

SingleFloat make_by_float(float x)
{
    SingleFloat result;
    result.value = x;
    return result;
}

SingleFloat divide(SingleFloat a, std::uint32_t b)
{
    // 2の乗数のみ受け付ける
    assert(std::bitset<32>(b).count() == 1);

    if (std::isnan(a.value))
        return make_by_float(a.value);

    if (std::isinf(a.value))
        return make_by_float(a.value);

    int exponent_x = a.parts.exponent;
    int exponent_y = std::log2(b);
    if (exponent_x <= exponent_y) {
        // 0や非正規化数のように指数が小さいaをなにかの値で割るとアンダーフローするので、0を返す
        return make_by_float(0.0f);
    }
    else {
        SingleFloat result;
        result.parts.fraction = a.parts.fraction;
        result.parts.sign = a.parts.sign;
        result.parts.exponent = exponent_x - exponent_y;
        return result;
    }
}

int main()
{
    std::cout << " 8/4 = " << divide(make_by_float(8.0f), 4).value << std::endl;
    std::cout << " 9/4 = " << divide(make_by_float(9.0f), 4).value << std::endl;
    std::cout << "24/8 = " << divide(make_by_float(24.0f), 8).value << std::endl;

    std::cout << " 0/2 = " << divide(make_by_float(0.0f), 2).value << std::endl;
    std::cout << "-0/2 = " << divide(make_by_float(-0.0f), 2).value << std::endl;

    using limits = std::numeric_limits<float>;
    std::cout << "denorm_min/2 = " << divide(make_by_float(limits::denorm_min()), 2).value << std::endl;
    std::cout << "NaN/2 = " << divide(make_by_float(-limits::quiet_NaN()), 2).value << std::endl;
    std::cout << "inf/2 = " << divide(make_by_float(limits::infinity()), 2).value << std::endl;
    std::cout << "-inf/2 = " << divide(make_by_float(-limits::infinity()), 2).value << std::endl;
}

出力:

 8/4 = 0
 9/4 = 0
24/8 = 0
 0/2 = 0
-0/2 = 0
denorm_min/2 = 0
NaN/2 = -nan
inf/2 = inf
-inf/2 = -inf

参照

Boost 1.63.0がリリースされました

Boost 1.63.0がリリースされました。リリースノートはいつものように、翻訳・情報補完したものをboostjpサイトで公開しています。

このバージョンは、まだリリースされていないVisual C++ 2017には対応していませんのでご注意ください。

前バージョンである1.62.0のリリースが遅れたこともあり、1.63.0がリリースされるまでの期間は短めになっていました。そのため、小規模な修正版になっています。

Nが2の何乗かを調べる

C++11から標準数学ライブラリに入ったstd::log2()関数を使えば、Nが2の何乗かを取得できます。

#include <iostream>
#include <cmath>

int main()
{
    std::cout << std::log2(4.0) << std::endl;
    std::cout << std::log2(8.0) << std::endl; // 8は2の3乗
    std::cout << std::log2(16.0) << std::endl; // 16は2の4乗
    std::cout << std::log2(32.0) << std::endl;
    std::cout << std::log2(64.0) << std::endl;
    std::cout << std::log2(128.0) << std::endl;
    std::cout << std::log2(256.0) << std::endl;

    std::cout << std::log2(24.0) << std::endl;
    int x = 24;
    if (x <= 0 || (x & (x - 1)) != 0) { // xが2の乗数か判定
        std::cout << "24 is not power of 2" << std::endl;
    }
}

出力:

2
3
4
5
6
7
8
4.58496
24 is not power of 2

修正履歴

  • 2016/12/26 19:20 : 2の乗数かの判定に、std::modf()を使用していましたが、
double integral_part;
if (std::modf(std::log2(24.0), &integral_part) != 0) {
    std::cout << "24 is a not power of 2" << std::endl;
}

@haxeさんに教えていただいて、以下のように修正しました。

int x = 24;
if ((x & (x - 1)) != 0) {
    std::cout << "24 is not power of 2" << std::endl;
}
  • 2016/12/26 21:06 : uskzさんからの指摘を受け、例としてxstd::numeric_limits::min()の場合に2の乗数と判定されてしまうため、暫定対処として正の値かどうかのチェックを追加しました。
  • 2016/12/26 23:24 : uskzさんからの指摘を受け、2の乗数と判定するコードに0を許可していたところを、許可しないよう修正しました。

C++11 標準ストリームへの出力はスレッドセーフ

本記事の本題とする、「一回の書き込みにすれば排他制御は必要ない」という部分が誤りであったため、本記事を取り下げます。

C++11から標準ライブラリに、並行プログラミングのための各種機能が入った影響は、入出力のライブラリにもあります。スレッドの存在を前提とした規定が追加されています。

[iostream.objects.overview] 27.4.1 p4には、以下のようにあります:

Concurrent access to a synchronized (27.5.3.4) standard iostream object’s formatted and unformatted input (27.7.2.1) and output (27.7.3.1) functions or a standard C stream by multiple threads shall not result in a data race (1.10). [ Note: Users must still synchronize concurrent use of these objects and streams by multiple threads if they wish to avoid interleaved characters. —end note ]

同期された標準iostreamオブジェクトの書式化された・されていない入力と出力の関数、および標準Cストリームに対する複数スレッドによる並行アクセスは、データ競合を引き起こさない。[注: 交互的な文字を避けるには、これらのオブジェクトとストリームの並行使用を複数のスレッドで同期させておく必要がある。]

最初の一文での「同期」とは、並行プログラミングでの同期ではなく、標準入力と標準出力の同期のことを指します。デフォルトで同期されます。パフォーマンスのために同期を意図的に外すこともあります。

注釈のところにある「交互的な文字」とは、スレッド1がos << 1 << 2;、スレッド2がos << 3 << 4;と書き込む場合に、出力順が13241234のように不定になり、スレッド間の出力が混在することを指します。複数スレッドからの並行アクセスによってiostreamのオブジェクトがおかしな状態になったりはしませんが、複数回の書き込みでの順序保証はありません。

結果が交互的になることを避けたい場合には、os << 1 << 2;os << 3 << 4;をそれぞれ一度で書き込む必要があります。そのためには、文字列フォーマットの関数(Boost.Formatや、fmtlibなど)や、文字列ストリームなどを使用することで解決します。

void thread1()
{
    // 解決策1 : 文字列フォーマット
    os << fmt::format("{0}{1}", 1, 2);
}

void thread2()
{
    // 解決策2 : 文字列ストリーム
    std::stringstream ss;
    ss << 3 << 4;
    os << ss.str();
}

このようにすることで、出力は必ず12343412のどちらかになります。もちろん、ミューテックスを使用して一連の書き込みの順序を保証してもかまいません。

参照

C++1z if constexpr文

C++1zから、コンパイル時条件によって分岐するif constexpr文が導入されます。これにより、再帰やヘルパ関数を書かなくて済むケースが多くなります。

D言語にあるstatic if文のようなものです。

template <class T, class... Rest>
void g(T&& p, Rest&&... rs)
{
    if constexpr (sizeof...(rs) > 0) {
        g(rs...); // rs...が空のときのオーバーロードが不要
    }
}

elseの方にはconstexprは必要ありません。 テンプレート内で条件分岐した場合は、到達しなかったブロックはインスタンス化されません。

ただし、条件式内でのコンパイル時条件については全てインスタンス化され、短絡評価によって後ろの方の条件がインスタンス化されないことを期待するようなコードは書けないので注意してください。

if constexpr (has_value_type_v<T> && typename T::value_type())

このような条件式は、else節に進む場合にコンパイルエラーになります。このような条件を書きたい場合は、条件分岐を入れ子にする必要があります。

if constexpr (has_value_type_v<T>) {
    if constexpr (typename T::value_type()) {
        …
    }
}

なお、constexpr ifでなくif constexprになっているのは、前者を採用すると構文として、else ifを書くときにconstexprが二重に必要になってしまうのを避けるためです。

// 採用された構文
if constexpr (cond) {
}
else if constexpr (cond) {
}
else {
}
// 却下された構文
constexpr if (cond) {
}
constexpr else constexpr if (cond) {
}
constexpr else {
}

最初に考えられていたstatic if宣言と違って、if constexpr文はスコープを導入します。また、型や関数を定義する条件分岐には使用できません。

// こういうことはできない。
// 条件によって関数や型の宣言・定義を変えるようなことはできないし、
// クラススコープでif constexpr文は使用できない
struct X {
    if constexpr (cond) {
        void f();
        using int32 = int;
    }
    else {
        void g();
    }
};

参照

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